個人再生手続きには,小規模再生,給与所得者等再生と2種類があります。
小規模再生,給与所得者等再生では,いくつかの違いがあります。
1 利用できる人
給与所得者等再生は,文字どおり,サラリーマンなど,定期収入がある給与所得者を対象にした手続きです。これに対し,小規模再生は,個人事業をしている人を念頭において作られた手続きですが,サラリーマン等,給与所得者も利用可能です。
2 弁済額の算定方法
個人再生では,現在ある債務から大幅圧縮を受けて,将来的に支払いを行うことになります。
個人再生でいくら支払うのかを算定する際,小規模再生,給与所得者等再生では違いがあります。
まず,小規模再生の場合,債務総額の2割(住宅ローンを除く債務総額が1500万円以下の場合)とお持ちの財産を合計して,どちらか金額の高い方を弁済していくという形になります。
つまり,債務総額から算出する債務基準と,財産総額から算出する財産基準の2つの基準があるのです。
次に,給与所得者等再生の場合,小規模再生の債務基準と財産基準は全く同じ基準として用いますが,加えて,3つ目の基準として,可処分所得の2年分という基準が出てきます。
可処分所得とは,収入から,税金,生活費等を控除した後に残るお金をいい,その2年分を弁済基準として用いることになります。
そして,債務基準,財産基準,可処分所得の2年分を比較して,一番金額が高いものを個人再生での弁済額としなければならないことになります。
現実には,可処分所得の2年分で計算をすると,債務基準を超えるケースが多く,特に,ある程度収入がある人であれば,可処分所得の2年分がかなり高額になることもあります。
そのため,個人再生手続きの申立てを行う際,小規模再生が原則,例外的に給与所得者等再生を選択するという考え方をするのが一般的になっています。
では,例外的に,給与所得者等再生を選択するような場合は,どのような場合かというのが,以下の3での説明になります。
3 債権者の意見聴取
小規模再生と給与所得者等再生の違いとして,小規模再生は,弁済計画について,債権者の意見を聞く必要がありますが,給与所得者等再生の場合,債権者の意見を聞く必要がありません。
小規模再生の場合,債権者の意見として,再生計画に同意しないという意見が過半数出ると,認可されないことになります。
具体的には,債務総額のうち,過半数を占める債権者が反対をするか,または債権者数のうち,過半数の債権者が反対をした場合,という2つの反対の可能性があります。両方を満たすことではなく,片方の条件を満たせば,個人再生は認められないということになります。
小規模再生の方が,給与所得者等再生よりも弁済額が低額で済むのに,あえて給与所得者等再生を選択する場合というのは,債権者の反対が見込まれるケースになります。なお,上記1で記載していますが,個人で事業をしている方は,給与所得者等再生の利用はできないことになります。
現実的には,債権者が反対の意見を主張するケースはほぼありません。ちなみに,当法律事務所で反対をされたことのある債権者は,東京スター銀行だけです。